Hishika
手鍛造日本鋸
純粋な職人技, 伝統的手法で日本で手鍛造される鋸。工業生産への妥協は一切なし。
哲学
引く、押さない。張力のかかった刃は真っ直ぐに保たれ、切れ味は鋭く、無駄も少ない。菱鹿は1970年から、400年の鍛冶の町・三木で鍛造を続ける。歯一本がひとつの所作であり、鋸一本が鍛冶場の一日になる。
歴史
兵庫県三木市は、400年以上にわたって日本の金物の中心地であり続けてきた。菱鹿は1970年からこの地で鋸を鍛え、明治期の鍛冶技術を直系で受け継いでいる。三木には鋸、鑿、鉋、包丁まで、工具鍛冶が世界でも稀な密度で集まり、鍛造に必要な水・鉄・木炭がそろう地理条件も重なっている。
日本の鋸、のこぎりが西洋鋸と決定的に異なるのは、押してではなく引いて切る点だ。手前に引くと刃は張力状態になり、直進性と安定性を保って座屈しない。結果として刃は薄くでき、鋸道は細くなり、木材のロスは減る。同じ板厚なら西洋鋸では出せない精度が得られる。
菱鹿が日本で最も有名な鋸を作るとは限らない。儀礼用や名匠の作品にその座があるかもしれない。ただし菱鹿が作るのは、日々使い倒すための最良クラスの実用鋸だ。大工、家具職、プロの木工が現場で使うための道具として設計されている。
治郎別所シリーズはその頂点で、刃は一本ずつ手鍛造、研削、ヤスリ仕上げ、最終仕上げまで手作業で行う。鋼材は白紙系のhaganeを使い、差し焼きで処理する。刃の背はしなやかに保って振動を吸収し、歯先は硬くして切れ味を出す。日本刀と同じ思想であり、比喩ではない。差し焼きは長年の経験を要する高度な冶金技術だ。
歯は一本ずつ目立てされる。各歯には固有の角度、あさり(鋸道幅を作る側方の曲げ)、形状がある。両刃鋸では両面の歯形が異なり、片面は縦挽き用、もう片面は横挽き用。一本で二役を果たす。
伝統的な藤巻きの柄、塚は汗を吸い、べたつかずに確かな握りを与える。些細な差に見えるが、硬木を一日中挽けば違いは明白だ。プラスチックでは手が滑り、藤では滑らない。
一部モデルは刃の交換が可能で、これは実用的な進化だ。伝統鋸の炭素鋼は時間とともに切れ味が落ちる。特に硬木や外材では顕著になる。200の歯を手で立て直す代わりに、刃を交換する。柄は数十年使える。
三木では毎年Miki Hardware Festivalが開かれ、町の鍛冶が一般向けに直接展示販売を行う。作り手本人から鍛造工具を生産者価格で買える、世界でも数少ない場の一つだ。
菱鹿の価格は、入門用胴付鋸で30ユーロ前後、治郎別所の大型両刃で200ユーロ超。手鍛造・手焼き入れ鋼の価格としては妥当で、同じ作業をより粗く、より騒々しく行う電動工具のコストと比べると、むしろ安く感じる。
アイコニック商品
Ryoba Jiro Bessho 240mm
両刃鋸, 日本の木工のスイスアーミーナイフ。片面は縦挽き、片面は横挽き。日本の大工が仕事の90%に必要な唯一の鋸。 治郎別所シリーズ:白紙鋼差異焼入、歯一本ずつ研磨、藤巻き柄。切り口は研磨ほぼ不要なほどクリーン。西洋の押す鋸に慣れた人にとって最初の一太刀は啓示。120〜200€。
Dozuki 240mm
胴付鋸, 背金付き、最も精密な日本の鋸。剛性のある鋼の背金が刃を完璧に真っ直ぐに保つ。精密な仕口用:ほぞ、蟻継ぎ、留め切り。 両刃より細かい歯、鉛筆線のように狭い鋸道。西洋の木工家が最初に買う日本の鋸, そして最後に使う西洋の鋸。60〜120€。
Kataba 270mm
片刃鋸, 単歯、背金なし。胴付鋸が届かない深い切り込み用(背金が切り込み深さを制限)。片刃は角材全体を切断できる, 大工の鋸。 背金なしで刃はより柔軟, 真っ直ぐに保つ技量が必要。両刃や胴付より知名度は低いが、プロの鋸。80〜150€。