Victoire Cycles
手ロウ付け自転車フレーム, オーダーメイドスチール・ステンレス、2012年からオーヴェルニュ
オーヴェルニュで手ロウ付けのスチール・ステンレスフレーム、サイクリストの体に合わせて調整。高貴な素材(レイノルズ、コロンバス)、職人自転車への現代的アプローチ。ノスタルジアなきフランスのフレームビルダー復興。
哲学
オーヴェルニュで手ろう付けする、スチールとステンレスのオーダーメイド自転車。フランスの職人系フレームビルダーを現代に再生する姿勢。
歴史
2011年、Victoire Cyclesはオーヴェルニュ地方のボーモンに工房を構え、最初から明確な方針を掲げました。目指したのは、妥協にも懐古趣味にも寄りかからず、スチールとステンレスで最高水準のオーダーメイド自転車を作ることです。素材としてのスチールは「他に選択肢がないから」ではなく、フレーム用途での機械的特性に優れ、設計自由度が高く、環境負荷の観点でもより責任ある選択肢だという判断に基づいています。つまり、見た目の伝統性よりも、走行性能と設計合理性を優先した素材選択です。
すべての車体は、顧客との長時間の対話を経てから受注生産されます。ライダーの体格や乗り方に加えて、用途がロードなのか、荒れた道なのか、トラックなのか、シングルトラックなのか、都市内移動なのかまで整理したうえで、技術要件と外観の希望を統合し、1本ごとの固有フレームを設計します。Victoireのカスタムは部分最適ではなく全工程一体型で、設計、製作、塗装、組み立てを同じ場所で完結させます。外注は行わず、売れ残り前提の余剰生産も行いません。1台ごとの要件を先に定義し、それに合わせて製造を組むため、同じ型番を大量に並べる発想とは根本的に異なります。どの工程を誰が担うかが工房内で一貫しているため、仕様変更や微調整にも現場で即応できます。
使用する合金は、スチールではReynoldsとColumbusという業界基準の銘柄を採用し、塗装しないフレームには用途に合わせて選定したステンレスを使います。フレームは職人が手作業でろう付けし、フォーク、ステム、キャリアも同じ思想で製作されます。保証は初代オーナーに対して生涯。さらに工房は、Enercoopが供給する再生可能エネルギーだけで稼働しています。Enercoopは、100%グリーン電力を掲げるフランス唯一の電力協同組合です。素材選定から製造、アフターケア、エネルギー運用までをひとつの責任範囲で結び、工程ごとの言い訳を作らない体制を取っています。
Victoireの設計原則はきわめて明快です。第一に重視するのは走る楽しさ。次にシンプルさで、自転車は「これ以上取り除けるものがない」状態に近づくほど完成度が高まると考えます。さらに細部を軽視せず、すべてを長期使用と修理可能性の前提で組み立てます。Victoireはこうした方針を通じて、サイクル産業に広がる過剰生産と生産拠点の海外移転に対し、現代的で実務的な代替モデルを提示しようとしています。ここでいう現代性は流行語ではなく、使い捨てを前提にしない設計思想と、国内工房で完結する製造責任にあります。大量供給よりも適正生産を選ぶ姿勢が、このブランドの立場をはっきり示しています。その一貫性が強みです。