ティエールの刃物職人が120ユーロのナイフをアメリカに輸出する場合、純利益率はおよそ15%だった。2025年4月以降、米国の関税が入国時に20%を徴収する。利益率はマイナスに転じた。ナイフは何も変わっていない。市場が変わったのだ。

壁の数字

トランプ政権は、EU からの輸入品に20%、スイスからの輸入品に31%の関税を課した。2025年に発効したこれらの措置は、既存の関税に上乗せされる。アメリカで販売されるヨーロッパの工芸品にとって、それは突然の、交渉不可能な、国境で適用される追加コストだ。

消費者価格は動き始めている。The State of Fashion 2026(BoF)によると、アメリカの衣料品価格は2025年1月から7月にかけて1.3%上昇し、調査対象の業界経営者の55%が2026年にさらなる関税関連の値上げを予想している。

そしてドルの問題がある。ECBによれば、ドルは2025年初頭から対ユーロで約12%下落しており、その一部は4月の関税発表後に急落したものだ。ヨーロッパの輸出業者にとっては二重苦:関税は増え、請求した1ユーロあたりに受け取るドルは減る。

耐える者、沈む者

大手ラグジュアリーグループ、LVMH、Hermès、Richemontには手段がある。販売価格を調整し、市場間で在庫を再配分し、物流チェーンを最適化する。粗利益率は60%を超えることも多い。20ポイントの関税は問題ではあるが、致命傷ではない。

小さな工房にとっては計算が違う。4人の職人を雇い、生産の30%をアメリカに輸出するLaguioleの鍛冶職人に、物流部門はない。コストを吸収するためのアメリカ国内の直営店ネットワークもない。あるのは原価、販売価格、そして10〜20%の利益率だけだ。20%の関税がすべてを食い尽くす。

選択肢は限られている。販売価格を上げるか?すでに出費がかさむアメリカの消費者は、より安い国内製品やアジア製品に流れる。追加コストを吸収するか?工房は赤字になる。米国市場を放棄するか?売上の3分の1を一夜にして失うことになる。

3つの工房、3つの現実

ティエールの刃物職人。 従業員8人、うち5人が鍛造担当。アメリカはニューヨークとポートランドの専門店を中心に、売上の25%を占めていた。関税導入以来、アメリカの販売代理店からの注文は半減。関税とドル安により、店頭での最終価格は25%跳ね上がった。顧客は躊躇し、注文は溶けていく。

プロヴァンスの陶芸家。 手びねりの作品を東海岸のギャラリーに輸出している。一点物で、80〜300ドル。20%の関税が加わると、ギャラリーは出荷価格の引き下げを求めてくる。だが不可能だ。土、釉薬、薪窯での焼成、作業時間。すべてに削れないコストがある。5つのギャラリーのうち2つが注文を止めた。

タルン県の靴職人。 オーダーメイドの靴職人で、国際的な顧客を持つ。アメリカは受注の20%を占めていた。注文は続いているが、納品する1足ごとに顧客の負担が20%増えている。待つ人もいれば、キャンセルする人もいる。受注台帳はじわじわと薄くなっている。

構造的な問題

関税は、8,000ユーロのHermèsのバッグと、手びねりの45ユーロの炻器の茶碗を区別しない。税率は同じ20%だ。しかし茶碗の利益率はバッグとは比べものにならない。関税制度は、企業の規模にも、製品の性質にも、作り手の経済的現実にも、まったく目を向けていない。

ヨーロッパの職人団体はブリュッセルに警鐘を鳴らしている。フランスの商工会議所連合会(APCMA)は、輸出を行う零細企業向けの補償メカニズムを求めている。今のところ、具体的な動きはない。ワシントンとブリュッセルの通商交渉は膠着状態だ。EUはアメリカ製品への対抗措置(バーボン、バイク、ジーンズ)を発表したが、影響を受ける職人への直接的な支援策は一切ない。

何が問われているのか

パーセンテージの向こう側で、アメリカ市場へのアクセスを失いかけているのは、ほかでもない技術そのものだ。メディアの一面を飾るブランドではなく、5人、10人、20人の工房が、何年もかけて大西洋の向こうに築いた顧客基盤のことだ。

アメリカ市場を失った刃物職人は、関税が下がっても半年では取り戻せない。販売代理店は別の仕入先を見つけているだろう。顧客は習慣を変えているだろう。一度切れた商業的なつながりは、結び直すのに時間がかかる。

大企業は嵐を乗り越えるだろう。小さな工房は注文を数えている。そして一部にとっては、もう帳尻が合わなくなっている。